「磁石にくっつく身近なもの」を探すとき、真っ先に思い浮かぶのはクリップや釘などの鉄製品です。しかし、物理学・物質工学の観点から見ると、磁石に強く引き寄せられる元素は鉄だけではありません。室温(約20℃前後)で強力な自発磁化を持つ物質は、専門用語で強磁性体(きょうじせいたい)と呼ばれます。
常温下で明確な強磁性を示す代表的な金属元素は、以下の3つに集約されます。
- 鉄(Fe):最も身近で代表的な強磁性体。スチール缶、クリップ、画鋲などに広く使用される。
- ニッケル(Ni):耐食性に優れ、メッキ加工や合金の原料として多用される金属。
- コバルト(Co):強力な永久磁石(アルニコ磁石やサマリウムコバルト磁石)の主原料となる希少金属。
物質を構成する原子の内部では、電子が自転のような運動(電子スピン)を行っています。多くの物質では電子の向きが互いに打ち消し合っていますが、鉄・ニッケル・コバルトなどの強磁性体では、外部から磁界が加わると電子のスピン方向が一斉に同じ向きへ整列します。この現象こそが、磁石に対して強い引力を生み出す根本的な磁石の仕組みと理由です。