なぜ、もっともリラックスできるはずの自宅がこれほど苦痛に感じられるのでしょうか。精神医学や心理学の観点から見ると、人が帰宅を拒む背景には「心理的安全性」の完全な喪失が隠されています。
職場や学校で過度な緊張状態にさらされた脳は、休息を求めます。しかし、自宅に戻っても「家事や育児のタスクに追われる」「パートナーの機嫌を伺わなければならない」「一人暮らしの部屋で孤独感と自己嫌悪に押しつぶされる」といった状況が待ち受けている場合、脳は自宅を「休息の場」ではなく「第二の戦場」と認識します。
その結果、無意識のうちに帰宅を遅らせて精神の崩壊を防ごうとする防衛本能が働きます。自宅に居場所がないと感じる孤独感は、うつ病を発症する手前の極めて危険なシグナルです。「家に帰りたくない」という衝動は、心がこれ以上傷つかないようにブレーキをかけている状態といえます。