将棋という極限の頭脳格闘技に人生のすべてを捧げた男たちの凄惨な生き様も、一般的な感覚から見れば時に狂気そのものだ。神の領域に立つ宗谷名人の浮世離れした静寂、家族を顧みず盤上にすがりつくベテラン棋士たちの執念。
健康や平穏な暮らし、時には人としての正気を削り落としながら勝利にしがみつく姿は、神聖であると同時に恐ろしい。勝利への欲望が生み出す泥臭いエゴや、敗者が味わう惨めな破滅感。盤上の戦いが単なる知能ゲームではなく「生の奪い合い」だからこそ、そこに立ち込める業(ごう)の匂いが、読む者に息苦しさと恐怖感を抱かせる。