ワニの寿命がなぜ長いのかという問いに対して、解剖学と生理学はいくつかの決定的な強みを提示しています。約2億年前の中生代三畳紀末から生き延びてきた構造には、過酷な環境を生き抜くための極めて合理的なメカニズムが備わっています。
第1に、極めて低い基礎代謝率です。変温動物であるワニは、体温維持に大量のカロリーを消費する哺乳類とは異なり、日光浴によって外部から熱を取り込みます。心拍数を毎分1〜2回にまで意図的に落とすことが可能で、わずかな獲物でも長期間生存できる省エネ設計が細胞への酸化ストレスを劇的に低減させています。
第2に、血液中に含まれる強力な抗菌ペプチド(クロコディリン)の存在です。泥水や病原菌に満ちた水域で四肢を失うような凄惨な共食いや縄張り争いを繰り広げても、傷口が化膿して敗血症を起こすケースは稀です。強力無比な免疫システムが感染症による早期死亡を防ぎ、天寿を全うする確率を底上げしています。
さらに、心臓に備わった「パニッツァ孔」と呼ばれる特殊な血管連絡路により、潜水時には肺循環をバイパスして酸素を無駄なく全身に配分できるなど、極限状態を耐え抜く構造が寿命の長さに直結しています。