SNSやQ&Aコミュニティ(知恵袋やX)で頻繁に見られる悲鳴が、「作業に熱中していたら手の平や指紋の隙間に絵の具がこびりついて落ちない」「洗面所で洗ったパレットがまだら模様に汚れたまま」「高かったお気に入りの筆がプラスチックのように固まって死んだ」という現場トラブルです。
まず、手についたアクリル絵の具の落とし方において、除光液やシンナーを素手に擦りつける行為は絶対に避けてください。皮脂を強烈に奪い、手荒れやアレルギー性皮膚炎の引き金となります。最も痛まず確実な裏ワザは、「オリーブオイルやクレンジングオイルなどの油脂を塗り込み、ぬるま湯の中でふやかす」手法です。乾いた絵の具膜と皮膚の間には微細な皮脂が存在するため、油分を馴染ませてから入浴時のような40℃前後の湯船や洗面器に浸すと、ペリペリとシート状に剥がれ落ちます。爪の間に入り込んだものは、爪ブラシに泡立てた石鹸をつけて軽く撫でるだけで一掃できます。
次に、制作後の片付けで頭を悩ませるアクリル絵の具のパレットの洗い方です。プラスチック製パレットの場合、中途半端に濡れた状態でこすり洗いすると、薄く引き延ばされた絵の具が細かな傷に入り込み、二度と取れなくなります。実は、あえて「完全に乾燥させてから端からめくり取る」のがプロの現場の常識です。厚めに残った絵の具は、プラスチックの表面張力により乾くと一枚のフィルム状になるため、爪やスクレーパーの端で引っ掛ければ一気に剥がれます。残った薄い絵の具汚れには、消毒用アルコールを含ませたペーパーで拭き取れば新品同様の透明感が戻ります。
さらに深刻なのが、放置によって毛先が岩のように硬化したケースです。カチカチになったアクリル絵の具の筆を復活させるには、ホルベインやターナー色彩などから発売されている専用の「ブラシクリーナー(筆洗液)」に毛先を浸け置くのが最も確実です。代用品としては「無水エタノール」を小瓶に注ぎ、毛先のみを底につけないよう吊るして2〜3時間浸け込みます。樹脂がグミ状に柔らかくなったら、ぬるま湯の中で毛の根元から指先で揉みほぐし、リンスや中性洗剤で整えて陰干しすれば見事に弾力を取り戻します。