咽頭炎の臨床において、極めて多くの患者が陥りがちな錯覚が「熱が出ていないから大した病気ではない」という思い込みです。SNSや医療Q&Aコミュニティを精査すると、「発熱はないが唾液を飲み込むたびにガラス片を飲んでいるような激痛がある」「平熱のまま3日経過したが、徐々に声がかすれてきた」といった生々しい悲鳴が多数投稿されています。
都内の総合病院で急性期診療に携わる耳鼻咽喉科専門医は、取材に対して次のような臨床の現場実態を明かしています。
「熱が出ないタイプの咽頭炎であっても、局所の炎症が深部組織へと波及しているケースは決して珍しくありません。特に高齢者や過労気味の若年層では、免疫応答が鈍化して発熱反射が起きにくいことがあります。微熱だからと自己判断で仕事を続け、最終的に扁桃の周囲に膿が溜まる『扁桃周囲膿瘍』や、窒息リスクを伴う『急性喉頭蓋炎』にまで進展して緊急切開や救急搬送に至る事例が毎年確実に発生しています」
発熱の有無は重症度を測る絶対的な物差しにはなりません。たとえ平熱であっても、咽頭炎の症状として頸部リンパ節の明らかな腫れ、開口障害(指が縦に2本入らない)、水分摂取時の強い嚥下痛が持続する場合は、組織の深部浸潤を疑うべき危険信号です。