ネット上の検索窓やSNS上では、藤原啓二さんに関して「結婚していたのか」「家族はいるのか」といったプライベートに関する疑問が根強く存在します。これについては、藤原さん自身が生涯独身であったことが公知の事実です。
なぜ「結婚している」という誤解が定期的に浮上したのか。その背景には、野原ひろしをはじめとする「理想の父親キャラクター」のイメージがあまりにも強烈だったこと、そして本人がインタビューなどで自身の私生活をあえて大っぴらに語らなかったことが挙げられます。かつて雑誌の対談で「家に帰っても誰もいないから、スーパーの総菜をつまみに一人で飲むのが落ち着くんだよね」と自虐交じりに語っていたように、私生活においてはどこまでも肩肘を張らない自然体の男性でした。
その一方で、仕事においては極めて強い責任感と変革の意志を持っていました。その象徴が、2006年に自ら立ち上げた声優事務所「AIR AGENCY」の設立です。
当時、トップ声優として多忙を極めていた藤原さんが、自らリスクを背負ってマネジメント会社を興した背景には、「若手が本当に演技に集中できる環境を作りたい」「型にはまらない個性的な役者を育てたい」という熱い信念がありました。経営者としての藤原さんは、後輩たちのオーディション原稿に自ら目を通し、マイク前での立ち振る舞いから現場での礼儀作法まで、厳しくも温かい眼差しで指導を続けていたといいます。プライベートの家庭を持たなかった藤原さんにとって、自ら育て上げた事務所と後輩声優たちこそが、ある種の「家族」であったと言えるのかもしれません。