「水分がほとんどないコーヒー豆や粉が腐るのか」という疑問に対し、食品微生物学的な見地から回答するならば、乾燥状態を維持している限り一般的な細菌が増殖して腐敗することはまずありません。細菌が増殖するためには一定以上の水分活性が必要ですが、乾燥したコーヒー豆の水分含有率は約1.5〜3%前後に過ぎないためです。
しかし、保存環境に湿気が伴った場合、事態は一変します。コーヒー粉やインスタントの顆粒が外気の湿気を吸うと、カビ(真菌類)が定着・繁殖する温床となります。もしコーヒー粉の表面に白や緑の斑点、クモの巣状の菌糸が見られたり、鼻を刺すようなカビ臭・薬品臭を感じたりした場合は、微量でもカビ毒(オクラトキシンAなど)を含んでいる危険性があるため、絶対に口にしてはなりません。
また、カビが生えていなくとも、高度に酸化したコーヒーを摂取するとクロロゲン酸類の酸化分解物や過酸化脂質が胃の粘膜を直接刺激します。「古いコーヒーを飲んだ後にお腹がゴロゴロ鳴る」「吐き気や激しい胃痛を覚える」といった症状は、細菌感染ではなく、この劣化した油脂類が引き起こす化学的な胃腸刺激が原因です。