野外で採取を行う際、地面に落ちている実だけを見て判断するのは危険を伴います。木全体の葉の特徴や樹皮、そして果実の付け根にある殻斗(カクト:いわゆるどんぐりの帽子)の形状を観察することで、ほぼ100%の精度で種類を特定できます。
1. 椎の実の王者「スダジイ」の識別点
公園や神社、照葉樹林に多く見られるスダジイは、樹皮が老木になると縦に深い亀裂が入るのが特徴です。最も確実な見分け方は「葉の裏の色」です。スダジイの葉を裏返すと、微細な毛に覆われて鈍い金色や赤褐色(ブロンズ色)に輝いて見えます。また、未熟な時期の果実は殻斗の中にすっぽり包み込まれており、秋に熟すとその殻が先端から3つに割れて中から黒褐色の小ぶりな実が顔を出すという独自の生態を持っています。実はやや尖った三角形に近い断面をしています。
2. 街路樹に多い「マテバシイ」との混同に注意
都市部の公園や街路樹として大量に植栽されているマテバシイも、アクが少なく食べられるどんぐりとして有名です。しかし、スダジイとは外観が大きく異なります。マテバシイの実は長さ2.5cm以上になることが珍しくなく、表面に美しい光沢があり、底部が平らでどっしりとした砲弾型をしています。葉は大きく分厚く、葉裏は淡い緑色です。スダジイほどの強い甘みはありませんが、フライパンでじっくり炒ることでビスケットのような素朴な風味を楽しめます。
3. 食べられない代表格「クヌギ」と「コナラ」
絵本やアニメに登場する「典型的な可愛いどんぐり」の多くは、コナラ属のクヌギやコナラです。クヌギはピンポン玉のように丸く、鳥の巣のように毛がもしゃもしゃと波打つ殻斗を持ちます。コナラは長楕円形で、幾何学的なウロコ模様のお椀をかぶっています。これらは渋み成分のタンニンが充満しているため、現地でそのまま口に入れると激しいえぐみで舌が痺れるような不快感を味わうことになります。