テレビから流れるわずか15秒・30秒の尺の中で、視聴者の心に強烈な爪痕を残したのが、スズキ「アルト ラパン」のCMで起用された奇妙礼太郎の『オー・シャンゼリゼ』でした。西島秀俊らが出演する洗練された映像美と、まるでパリの石畳を陽気に歩くような軽快なスウィングのリズムがシンクロし、「このお洒落で心温まる歌声を響かせている男性シンガーは誰なのか?」と問い合わせや検索が殺到しました。
元々『オー・シャンゼリゼ』は、1960年代に発表されたイギリスの楽曲『Waterloo Road』をフランスの歌手ジョー・ダッサンがカバーして世界的大ヒットとなったフレンチポップスの金字塔です。日本でも越路吹雪やダニエル・ビダルをはじめ数多くのアーティストによって歌い継がれてきましたが、奇妙礼太郎によるアプローチは従来のシャンソン的な優雅さとは一線を画していました。
しゃがれた倍音を豊かに含む声質、ジャズやニューオーリンズ・ブラスバンドの熱気を取り入れた泥臭くも華やかなホーンセクション、そして日本語詞の語感を生き生きと跳ねさせる独特のフレージング。単なるBGMの枠を超え、車のある豊かなライフスタイルを想起させる強力なアンセムとして機能したのです。