大相撲の門を叩く若者にとって、最初の関門となるのが「新弟子検査」です。長年にわたり、日本相撲協会は力士の生命線として厳格な新弟子検査の身長・体重基準を設けてきました。かつては原則として「身長173cm以上、体重75kg以上」が義務付けられており、基準にわずか数ミリ届かないだけで夢を断たれる志望者が続出していました。
「技のデパート」舞の海が挑んだシリコン注入の壮絶な裏話
この身長制限を語る上で欠かせないのが、元小結・舞の海秀平氏のエピソードです。日大相撲部で活躍しながらも実測身長が約169cmだった舞の海氏は、当時の検査基準(173cm)を満たすため、頭皮の下にシリコンを埋め込む手術を決断しました。
当時の手記や特番インタビューにおいて本人は、「頭皮を切り開いて医療用シリコンを挿入し、皮膚を無理やり伸ばすため激痛で夜も眠れなかった」と過酷な体験を告白しています。この決死の処置によって見事に173cmの基準をクリアして合格を果たしたものの、激しい頭痛や感染症のリスクを伴う危険な行為であったことから、相撲協会は直後に「シリコン注入等の人工的な身体加工による受験」を禁止する通達を出しました。
新弟子検査合格基準の現在と体格基準緩和の経緯
その後、少子化や競技人口の減少を背景に、相撲界では相撲の身長制限緩和の経緯が段階的に進められました。2001年には基準が「167cm以上、67kg以上」へと引き下げられ、さらに中学校卒業見込者に限る「就職場所(春場所)」向けの緩和規定などが整備されました。
そして近年、日本相撲協会は大相撲体格基準の最新ニュースとして大きな制度改革を実行しました。従来の体格基準(身長167cm以上、体重67kg以上)に満たない入門希望者に対しても、背筋力、握力、ハンドボール投げ、50メートル走などの運動能力測定(体力テスト)に合格すれば入門を認める新基準を本格運用しています。これにより、純粋な体格の数値だけで才能ある若者を排除する構造が改められ、間口が大きく広がりました。