過酷事故の最前線で吉田を支えたのは、普段から彼を「親父」と慕っていたベテラン技術者や作業員たちだった。吉田の人望と現場重視の姿勢がなければ、あのパニックの中で統率を維持することは不可能だったと言われる。
しかし、事故から歳月を経て、現場で死線を共にした「吉田チルドレン」と呼ばれる世代の多くが退職や異動を迎えている。原子力産業が直面しているのは、彼らが命を賭して体得した「極限状態での判断力」をいかに次世代へ継承するかという重い課題だ。計器が狂い、マニュアルが瓦解した暗闇で何を信じるべきか。技術の伝承は、今まさに正念場を迎えている。