セクシュアルマイノリティ文化における「タチ」と「ネコ」という言葉は、もともと歌舞伎の立ち役(男役)と女形、あるいは猫の受動的な仕草などに由来すると言われる日本独自の俗称です。基本定義として、タチとネコの違いは性行為において主導権を握り相手を攻める側(タチ・Top)と、受け入れる側(ネコ・Bottom)という身体的・技術的な役割分担を指します。
しかし、ネット上や一部の俗説では、この身体的役割がそのまま「性格」や「見た目」と強固に結びつけられてきました。取材現場で聞かれるタチの特徴と性格の代表格は、「男気がある」「リーダーシップを発揮する」「奢りたがる」といった能動性です。一方でネコの特徴と行動には、「甘え上手」「受動的」「感情豊かでサポート役に回る」といったイメージがつきまといます。
実際の当事者関係において、ベッド上の嗜好と日常のパーソナリティは必ずしも一致しません。外見がフェミニンでありながら性生活では完全に主導権を握る人もいれば、屈強な体躯やマッシュショートヘアで日常をリードしながら、ベッドでは完全に身を委ねたい人も大勢存在します。この「性的嗜好」と「ジェンダー表現」の混同こそが、不要な誤認やすれ違いを生む最大の温床です。