「ビタミンは水溶性だから過剰に摂っても尿から排泄されるため安全」という認識は、メガビタミン療法において最も危険な誤解です。厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準」において、ナイアシンアミド1日の推奨摂取量目安は成人で12〜15mgNE(ナイアシン当量)と定められており、耐容上限量は年齢や性別により250〜350mg/日に設定されています。
海外製サプリメントの多くは1カプセルあたり500mgを含有しており、これを1日2〜6カプセル(1,000〜3,000mg)摂取する行為は、国の定める耐容上限量を日常的に数倍から十倍以上も超過することを意味します。ここで最大の問題となるのがナイアシンアミドの副作用と肝機能への影響です。
ナイアシンアミドは肝臓でメチル化されて排泄されますが、大量摂取が続くと肝細胞の代謝キャパシティを圧迫し、細胞障害性の肝機能障害(AST・ALTの著明な上昇、黄疸)を惹起する症例が医学論文で多数報告されています。さらに、メチル基を消費し尽くすことで生体内の「ホモシステイン」が蓄積し、かえって動脈硬化リスクや心血管系への負担を増大させる生化学的リスクも指摘されています。
もう一つの重大な懸念事項が抗うつ薬との飲み合わせと併用注意点です。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI、三環系抗うつ薬などを服用している患者が自己判断でナイアシンアミドを大量併用した場合、セロトニン代謝への二重の干渉が理論上起こり得ます。さらに深刻なのは「サプリメントが効いた気がするから」と自己判断で処方薬を急激に減薬・断薬してしまう行為です。これにより生じる「抗うつ薬中断症候群」(激しいめまい、シャンピリ感、不安の再燃)は極めて苛烈であり、原疾患の悪化と重なって深刻な精神的危機を引き起こします。