テーブルマナーの指導現場で最も質問が多く、ネット上でも議論が絶えないのが「ナイフからフォークへ持ち替えてよいのか」という疑問です。マナーコーチのタミ・クレイター氏をはじめとする欧米のエチケット専門家が指摘するように、現代の西洋料理には主に「ヨーロッパ式(コンチネンタル・スタイル)」と「アメリカンスタイル」という2つの正統な流派が存在します。
ヨーロッパ式(イギリス式・フランス料理マナーの主流)では、食事の開始から終了まで、左手にフォーク、右手にナイフを持ったまま食べ進めます。肉を切ったらフォークを持ち替えることなく、左手のまま背または腹を使って口へ運びます。これに対し、アメリカンスタイルでは、まず左手で肉を押さえ、右手のナイフで1口分を切った後、ナイフを皿の右上に置き、フォークを右手に持ち替えて(ジグザグ・メソッドと呼ばれます)口に運ぶ作法が正式なマナーとして認められています。
「持ち替え=下品でマナー違反」と決めつけるのは、現代のグローバルスタンダードから見れば明らかな誤解です。どちらのスタイルを選択しても非難される筋合いはありません。ただし、1口ごとに左右をバタバタと忙しなく持ち替える所作は、同席者に落ち着きのない印象を与えかねません。欧米のエグゼクティブ層と同席するビジネスディナーでは、無駄な動作を削ぎ落としたヨーロッパ式が好まれる傾向にあります。