京本政樹の名を不動のものとし、「時代劇の美形俳優」の代名詞へと押し上げたのが、1980年代前半に相次いで発表された映像作品群です。
まず1983年に公開された深作欣二監督の超大作映画『里見八犬伝』。薬師丸ひろ子や真田広之といった錚々たるスターが顔を揃えるなか、京本が演じた犬山道節は、知性と哀愁、そして妖艶さを兼ね備えた孤高の剣士でした。暗闇に浮かび上がる白い肌と長い黒髪のコントラストは、映画館に足を運んだ女性客の視線を釘付けにしました。
そして1985年、彼のキャリアにおける最大の転機となる『必殺仕事人V』がスタートします。彼が演じた組紐屋の竜は、従来の「必殺」シリーズが持っていた泥臭さや無骨さを鮮やかに裏切る、中性的な仕掛け人でした。首に巻いた組紐を鮮やかに操り、鈴の音とともに標的を仕留める所作は、歌舞伎の女形にも通じる究極の機能美を体現していました。
当時の制作関係者の証言によると、竜の衣装選びやメイク、かんざしの差し方に至るまで、京本自身の美意識が徹底して反映されていたといいます。自著や当時の雑誌対談で本人は「時代劇という枠組みの中で、いかに現代の若者の心に刺さる耽美的なリアリズムを構築できるか、髪の毛一筋の落ち方にまで命を懸けていた」と告白しています。
このこだわりは見事に結実し、最高視聴率20%超を連発する大ヒットを記録。プロマイドの売上ランキングでは男性アイドルたちを抑えて首位を独占するなど、時代劇の枠を完全に飛び越えたポップアイコンへと昇華したのです。