かつての閉ざされた倉庫街は、いまやスマートフォンの画面を通じて世界中と接続されている。Google マップの案内を頼りに細い路地に迷い込んだ旅行者たちが、思い思いの角度でカメラを構える姿は日常の風景となった。
特にInstagramをはじめとするSNS上では、錆びた非常階段や、無造作に置かれたアンティークの看板、窓から差し込む斜光を切り取った写真が数多く投稿されている。どこを切り取っても絵になる空間構成は、作為的なフォトスポットとは一線を画す、偶然と歴史が生んだ立体的なインスタレーションのようだ。
画面越しの情報を追って訪れた若者たちも、足を踏み入れた瞬間にスマートフォンの操作を忘れ、木床を踏みしめる乾いた音や古い建物の匂いに五感を奪われる。デジタルの導線が、極めて身体的なリアル体験へと結実する瞬間がここにはある。