一口に茶色いあざと言っても、皮膚科の診断ではいくつかの異なる疾患単位に分類されます。最も代表的なものが扁平母斑(へんぺいぼはん)です。境界がくっきりと明瞭で、ミルクティーのような均一な淡褐色から濃褐色を呈し、皮膚の盛り上がりは一切ありません。あざの中に点状の小さな黒い毛穴(小黒点)が散在するタイプも存在します。
扁平母斑と同義、あるいはその一部として扱われるのがカフェオレ斑です。単発で生じる場合は単なる皮膚の色素異常に過ぎませんが、臨床現場で警戒されるのが「レックリングハウゼン病初期症状」としての現れ方です。神経線維腫症1型(NF1)と呼ばれるこの疾患では、思春期前で長径5mm以上、思春期以降で長径15mm以上のカフェオレ斑が6個以上認められることが診断基準の第一歩となります。さらに、成長に伴って脇の下や足の付け根に小さな雀卵斑様の色素斑が現れる特徴があります。単発のあざであれば神経過敏になる必要はありませんが、身体のあちこちに多数出現している場合は小児科専門医への受診が推奨されます。
また、思春期前後に発症・顕在化しやすいのがベッカー母斑特徴です。多くは男子の肩や胸部、背部などの体幹部に好発し、手のひらサイズ以上の不規則な茶色い地図状のあざが広がり、やがてその領域から濃い剛毛が生えてくる特徴を持ちます。アンドロゲン(男性ホルモン)受容体の感受性が関与していると考えられており、乳幼児期の扁平母斑とは発生機序が異なります。
さらに保護者から頻繁に問われるのが、「赤ちゃん茶色いあざ増える理由」です。出産直後は赤ちゃんの皮膚が非常に薄く、メラニンの絶対量が少ないため肉眼では確認できないケースが多々あります。生後数か月から数年を経て、日光の紫外線に晒されたり皮膚の新陳代謝が活発化したりすることで、潜在していた色素細胞が活発にメラニンを放出し、あたかも「あざが後から増えた・浮き出てきた」ように認識されるのです。