「首が痛いから筋肉を伸ばそう」「血行を良くすれば治るはずだ」という思い込みは、頸椎ヘルニア治療において最も警戒すべき落とし穴です。医療機関の救急外来には、整体やマッサージ店での施術直後に激痛で動けなくなった患者が頻繁に搬送されてきます。
まず把握すべきは、頚椎ヘルニアのやってはいけないストレッチの具体例です。首を円を描くようにぐるぐる回す回旋運動や、手で頭を横に強く倒して首筋を限界まで引き伸ばす側屈ストレッチは絶対に行ってはなりません。ヘルニア発症部位はすでに組織が断裂し、局所的な無菌性炎症を起こしています。その状態の靭帯や筋肉を過剰に牽引すれば、炎症が周囲へ拡大し、神経浮腫(むくみ)が増悪して激痛発作を引き起こします。
次に、頚椎ヘルニアのマッサージ悪化理由について解説します。肩や首の筋肉が板のように硬くなるのは、痛む頸椎をこれ以上動かさないよう身体が防御的に筋肉を固めている「筋スパズム(防御収縮)」という生体反応です。これを無理やり指圧や強い揉みほぐしで破壊すると、頸椎の支持性が失われてヘルニアの突出が一段と進行します。加えて、直接患部を押圧することで、飛び出している髄核を脊髄や神経根に向かってさらに強く押し込む結果となります。
また、回復期であってもやってはいけない筋トレや激しい運動が存在します。バーベルを担ぐスクワット、頭上へ重りを押し上げるショルダープレス、首に負荷のかかる腹筋運動(シットアップ)は頸椎への垂直圧迫ストレスが極めて高く厳禁です。ランニングやジャンプ動作を伴う球技も、着地時の衝撃がダイレクトに頸椎へ伝達するため、初期〜中期は控えるのが鉄則です。