このような都市文化としての港区スタイルは、どのようにして形作られてきたのか。その源流を辿ると、メディアによる巧妙な「憧れのブランディング」に行き着く。
特に大きな影響を与えたのが、東京カレンダー株式会社が手がけた連載企画、およびそれを実写化したドラマ『東京女子図鑑』だ。水川あさみが主演を務め、Amazon Prime Videoなどで配信されたこの作品は、地方から上京した一人の女性が、秋田から三軒茶屋、恵比寿、そして銀座・港区へとステップアップしていく姿を描いた社会派ライフスタイルドラマとして大きな話題を呼んだ。
作中で描かれた「港区で選ばれる女性」の象徴的な姿は、多くの女性たちに都市の階層意識と強い憧憬を植え付けた。高級レストランでの食事や一流の男性との交遊が「女性としての成功の証」としてメディアで消費されるにつれ、単なる地理的区分に過ぎなかった港区が、ひとつの巨大なブランド価値へと昇華していったのである。