京都・養源院の血天井と白象図の真相|淀殿と江の祈りを徹底解明

京都・養源院の血天井と白象図の真相|淀殿と江の祈りを徹底解明

京都・養源院の血天井と白象図の真相|淀殿と江の祈りを徹底解明の重要ポイントをご紹介します。専門的な知識が詰まっています。

歴史社会学および深層心理学の視点から養源院を観察すると、ここには戦国乱世を生き抜いた女性たちによる「究極の心理的境界線(バウンダリー)」の構築が見て取れます。

織田信長によって父・浅井長政を討たれ、母・お市の方の再婚相手である柴田勝家をも秀吉に滅ぼされた浅井三姉妹。その長女・茶々(淀殿)は仇敵である秀吉の側室となり、三女・江(崇源院)は秀吉の宿敵であった徳川家の御台所となりました。現代の家族心理学で論じられるような「家系が負った過酷なトラウマ」のただ中にありながら、彼女たちは決して自暴自棄に陥ることも、夫たちの政治権力に完全に同一化(共依存)することもしませんでした。

淀殿が秀吉の威光を利用して父・長政の院号を冠した寺を建立し、淀殿亡き後は妹の江が徳川の資金と遺構を用いてその寺を再建した――。この行動は、どれほど巨大な武家権力に組み敷かれようとも、「私自身のルーツであり、かけがえのない父と家族の菩提を弔う領域だけは絶対に侵させない」という、毅然とした精神的自立の表明にほかなりません。

血天井という徳川武士の無念の痕跡を引き受けつつ、浅井一族の位牌を中央に据え、宗達の白象によってそれらすべてを優しく包み込む。養源院という空間は、対立と復讐の連鎖に明け暮れた男たちの戦国史の裏で、女性たちが祈りと芸術の力によって復讐を「和解と成仏」へと昇華させた、日本史上屈指の奇跡の空間なのです。

阿部 裕樹
著者

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。