国内の繊維産地が直面する後継者不足と産業空洞化の波は、今なお激しい。日本ワイシャツ工業会の統計を覗くまでもなく、純国産のシャツが国内市場に占める割合はごく僅かな水準にとどまっている。そんな逆風の只中で、サプライチェーンの維持に奔走するのが現社長の貞末奈名子だ。
父である創業者の精神を受け継ぎながら、彼女は女性目線の柔らかな感性と現代的な組織改革を注入した。青森や福島といった東北各地の提携工場を定期的に巡回し、縫製技術者の地位向上や若手育成の環境整備を積極的に推し進めている。工場を単なる下請けではなく、運命を共にする対等なパートナーと位置づける姿勢は微動だにしない。
ビジネスウェアのカジュアル化が進む今だからこそ、襟元を正すための端正なドレスシャツが持つ心理的な価値は再評価されている。伝統を墨守するのではなく、現代の体型変化や生活リズムに合わせてミリ単位のパターン修正を重ねる進化の歩みが、次世代のスタンダードを紡ぎ出している。