他県出身者が最も驚きを示す香川グルメが「讃岐あんもち雑煮」です。いりこ出汁のきいた濃厚な白味噌仕立ての汁の中に、大根や金時人参とともに、粒餡が入った丸餅が鎮座しています。一見すると味の想像がつかず、「ミスマッチではないか」と敬遠されがちですが、一口啜ればその認識は一変します。
この料理のルーツは江戸時代に遡ります。当時、讃岐国は「讃岐三白」の一つとして高級和三盆糖の生産地でしたが、幕府への献上品であったため、庶民が日常的に口にすることは厳しく禁じられていました。そこで農民たちが「正月くらいは甘い砂糖を味わいたい」と、役人の目を盗んで雑煮の餅の中に餡を隠し入れたのが始まりとされています。白味噌の塩気と餡の甘みが溶け合うことで、上品なポタージュのような奥行きある味わいが完成します。
讃岐あんもち雑煮の有名店としては、高松市栗林公園近くの和菓子店「松風庵かねすえ」の喫茶コーナーや、兵庫町商店街の老舗甘味処「甘味茶屋 ぶどうの木」が知られており、正月以外の観光シーズンでも作りたての熱々を提供しています。
また、お通しや酒の肴として定番なのが香川名物しょうゆ豆です。煎ったそら豆を熱いうちに醤油、砂糖、みりん、唐辛子などを合わせた調味ダレに漬け込んで作られます。煮豆とは異なり、あらかじめ焙煎されているため、口に含むと皮ごとポロッと砕ける独自の香ばしい歯触りがあります。家庭ごとの配合や老舗醤油蔵ごとの個性があり、噛むほどに広がる素朴な甘辛さが旅情を誘います。