日本国内で和彫りが長らくアングラな烙印を押されてきた背景には、大衆メディアの強烈な刷り込みがある。かつての任侠映画や、北野武監督の『アウトレイジ』シリーズに代表されるヤクザ映画において、背中に彫られた巨大な龍や虎は「反社会的勢力の構成員であることの不可逆な証明」として消費されてきた。劇中で主人公たちがサウナや密談の場で上半身を晒すシーンは、暴力と死への覚悟を観客に叩きつける舞台装置に他ならなかった。
しかし、Netflixをはじめとするグローバルな動画配信プラットフォームの台頭が、この構図に風穴を開け始めた。海外制作のドキュメンタリーや先鋭的なドラマシリーズにおいて、日本の刺青は「犯罪者の印」ではなく「孤高の職人芸」「消えゆく東洋の至宝」として緻密な映像美とともに切り取られている。画面越しにその圧倒的な美術的価値を知ったミレニアル世代やZ世代の間では、かつてのヤクザ映画的な恐怖感は希薄化し、純粋なアヴァンギャルド・アートとしての再評価が進んでいる。