循環器専門病院の待合室や医療系コミュニティ(知恵袋や患者手記、SNSの体験談)には、陳旧性心筋梗塞を巡るリアルな声が数多く寄せられています。そこから浮き彫りになるのは、教科書的な「左胸を握りつぶされるような激痛」というイメージとはかけ離れた、日常の些細な不調との混同です。
都内のIT企業に勤務する50代男性のカルテ記録や取材記録によれば、健診で突然要精密検査を突きつけられた際、医師から「半年前から1年前に激しい体調不良はありませんでしたか?」と問われ、過去の記憶を呼び起こしたといいます。「そういえば昨年の冬、ひどい胸焼けと肩こり、背中の痛みが2日ほど続き、消化器内科で胃薬をもらって誤魔化していた」という証言は、典型的な放散痛(関連痛)の事例です。心臓の痛みを伝える神経は首や肩、背中、顎、胃の知覚神経と脊髄内で合流しているため、脳が心臓の異常を「胃痛」や「筋肉痛」と勘違いしてしまう現象が頻繁に起こります。
また、60代女性の手記では、「糖尿病で通院していたが、ある朝、寝汗と倦怠感で起き上がれず、風邪だと思い込んで丸一日寝て過ごした。その数ヶ月後のドックで陳旧性心筋梗塞と判明した」という告白が残されています。患者側には「本当に心臓の発作なら倒れて救急搬送されるはずだ」という正常性バイアス(強い否認)が働くため、軽度の不快感であれば無意識に過小評価してしまいます。現場の循環器内科医が口を揃えるのは、「健診の心電図所見は、患者本人が見過ごした過去の遭難信号を拾い上げたブラックボックスの解析結果である」という事実です。