言葉の成り立ちを紐解くと、両者にはまったく異なる文化的ルーツが見えてきます。最も有力視されているのが、神道信仰と武家文化という二つの視点です。
「おむすび」の語源は、日本神話の『古事記』に登場する天地創造の神「高御産巣日神(タカミムスビノカミ)」に由来すると伝えられています。古代の日本人は、神の御霊(みたま)が宿る場所として山を崇拝していました。そのため、収穫した神聖な米を山の形に似せた「三角形」に握り、神の力を授かる儀礼食として食べたことが「おむすび」の始まりとされています。万物を生み出し結びつける「産霊(むすび)」の概念そのものが、三角の形状に込められているのです。
対して「おにぎり」の起源は、米をぎゅっと固める行為である「握り飯(にぎりめし)」が変化した言葉です。さらに民俗学的な俗説として根強いのが「鬼を切る」という魔除け・厄払いの説です。鋭い角を切り落として災厄を払う武士の験担ぎ(げんかつぎ)や、鬼を退治する民話と結びつき、民間庶民の間で「おにぎり」として広まった経緯があります。