坊というキャラクターの変遷は、本作の裏の主役とも呼べる「精神的自立」を如実に象徴しています。巨大な赤ん坊だった頃とネズミに変身していた時期、そして油屋へ帰還した後の状態を比較すると、宮崎駿監督が仕掛けた周到な心理描写のステップが浮かび上がってきます。
このデータ比較からも明らかなように、坊ネズミの期間は坊にとって必要な「社会化のステップ」でした。他者を脅して腕を折ろうとしていた赤ん坊が、千尋のピンチには小さな前足で守ろうとし、ハエドリと協力して困難を乗り越えていく過程は、子供が親の庇護を離れて友だちを作り、成長していく現実世界の通過儀礼そのものです。