一方で、日本の写真家・宮本隆司が提示したアプローチは、極めて静謐でありながら圧倒的な視覚的インパクトを放っている。立ち退きが進み、静寂が支配し始めた解体前夜の空間を捉えた作品群は、建築写真の金字塔として国際的に高く評価された。
香港政府と中国政府の政治的合意により解体が決まり、住民が去った後の無人の城砦。宮本は、主を失った無数の部屋、重なり合う鉄骨、壁に遺された生活の痕跡を緻密なコンポジションで切り取った。彼の写真は、この奇妙な建造物を単なる都市の異形ではなく、時間と共に変化し成長したひとつの巨大な「彫刻作品」として作品化することに成功している。