物語の根底にあるのは、結婚生活に満たされない主人公・水野麻也子の焦燥感です。夫・航一からの無関心と過度な潔癖症、セックスレスに苛まれた麻也子は、昔の恋人である野村との情事に手を染め、やがて情熱的な年下の音楽評論家・工藤通彦と本気の恋に落ちていきます。息苦しい家庭を捨てて通彦との新たな人生へ踏み出す――そこまでは一見、抑圧からの解放を描く王道の純愛ストーリーに見えます。
しかし、本作の真骨頂はここから訪れる冷酷なリアリズムにあります。麻也子は念願叶って航一と離婚し、通彦と再婚を果たしますが、待ち受けていたのは貧しい生活と、世間知らずな通彦に対する苛立ちでした。「日常」という現実に引き戻された麻也子の前に現れたのは、かつて都合のいい関係を結んでいた野村。ラストシーンで麻也子は、通彦の待つ部屋を後にし、再び野村の甘い誘惑へと身を投じていきます。「相手を変えても、自分自身の渇望が満たされることはない」という残酷な結末は、当時の視聴者に強烈な戦慄を与えました。
さらに2017年に放送されたスペシャルドラマ『不機嫌な果実スペシャル〜3年目の浮気〜』では、通彦との生活に倦怠感を抱いた麻也子が再び過ちを犯し、元夫の航一や周囲の人間を巻き込んださらなる愛憎の泥仕合へと発展。欲望の連鎖に終わりがないことを徹底して描き切る幕切れとなりました。