ワールドカップの舞台で日本がブラジルと直接激突したのは、2006年ドイツW杯グループステージ第3戦のドルトムントでした。決勝トーナメント進出に向けて「2点差以上の勝利」が絶対条件という極限状況の中、ジーコ監督率いる日本代表のブラジル戦スタメンには大きな決断が下されました。初戦のオーストラリア戦、第2戦のクロアチア戦で結果を出せなかった前線を刷新し、巻誠一郎と玉田圭司をツートップに抜擢した采配は、当時のメディアやファンの間でも大きな議論を呼びました。
試合開始直後、日本は並々ならぬ気迫で王者に対峙しました。前半34分、三都主アレサンドロのスルーパスに抜け出した2006年ドイツW杯の玉田圭司による鮮烈なゴールは、強烈な左足のシュートが名手ジダの守るゴールネットを揺らし、世界中を驚愕させました。当時の特番インタビューや選手の手記において、玉田自身が「無我夢中で振り抜いた瞬間、スタジアムの空気が完全に日本のものになったと感じた」と述懐している通り、スタジアムは一時、歴史的アップセットへの期待に包まれました。
しかし、そこからブラジル代表が見せたギアチェンジこそが、世界最高峰の残酷な現実でした。前半終了間際にロナウドの同点ヘッドを許すと、後半はジュニーニョ・ペルナンブカーノの無回転ミドル、ジウベルト、そして再びロナウドに決められ、終わってみれば1-4の完敗。公の場で見せた選手たちの疲労困憊の表情や、試合後の「世界との差はあまりにも大きかった」という生々しい告白は、個のクオリティのみならず、90分間を通じたゲームマネジメントの圧倒的な格差を浮き彫りにしました。