湯の山といえば、映画『男はつらいよ フーテンの寅』第3作の舞台としても語り継がれる場所だ。車寅次郎がふらりと現れ、旅情と淡い恋に身を焦がしたあの昭和の湯煙の気配は、今も路地のそこここに息づいている。この地が持つどこか懐かしく温かな空気感が、令和の世を生きる私たちの心を解きほぐす。
その情緒を夜の膳で体現するのが、料理長が腕を振るう季節の会席料理だ。菰野名物の僧兵鍋のエッセンスを取り入れた逸品や、選び抜かれた三重県産ブランド牛の陶板焼き、さらには伊勢湾から届く鮮魚が食卓を彩る。奇をてらいすぎず、出汁の輪郭をしっかりと立たせた味付け。地の利を活かした山海の滋味は、ひと口ごとに身体へ染み渡り、温泉上がりの心地よい疲労を贅沢に満たしてくれる。