ネット上のQ&Aサイトや短尺解説動画には、「中心角のない扇形はすべてこの公式で片付く」と誇大に宣伝するものが散見されますが、そこには見過ごせない数学的盲点が潜んでいます。
最も典型的な落とし穴が、冒頭でも触れた「弓形(ゆみがた)の面積の求め方」との混同です。円を1本の直線(弦)でスパッと切り落としたときにできる、かまぼこ型の弓形については、弧の長さと半径が分かっていても $S = \frac{1}{2}\ell r$ で直接面積を出すことは絶対にできません。
弓形の面積を導出する絶対的な手順は、「同じ弧を持つ扇形の面積」を算出した後、中心と弦の両端を結んでできる「三角形の面積」を引き算するという二段階のアプローチです。この際、裏ワザ公式は「扇形パートの計算」を一瞬で終わらせるために機能するのであって、引くべき三角形の面積計算(底辺×高さ÷2、あるいは三角比を用いた $\frac{1}{2}r^2\sin\theta$)を免除してくれるわけではありません。
また、ネット上では「学校の定期テストでこの裏ワザを使うと反則としてバツを食らう」という噂が根強く囁かれています。これについて東京都内の公立中学校で指導を行う現役数学教諭は、次のように誤解を正します。
「答えのみを書かせるマークシート方式や数値記入式の問題であれば、どのような解法を使おうと正解は正解です。ただし、入試や定期テストの『記述式解答欄』において、公式の根拠を示さずにいきなり数値を当てはめると、採点基準によっては途中の論理展開が不十分とみなされ減点対象になるリスクは否定できません。学校の記述答案では『おうぎ形の面積は中心角に比例するため〜』と記述するか、余白の計算スペースで裏ワザを使って答えを検算するツールとして活用するのが最も賢明な立ち回りです」