2021年秋ドラマの頂点として語り継がれる『最愛』の真価はどこにあったのか。その根幹にあるのは、新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督の黄金コンビが送り出した、精緻を極めた完全オリジナル脚本(奥寺佐渡子、清水友佳子)の完成度です。
原作付きの実写化が全盛を極める日本のテレビ界において、原作あらすじとネタバレが事前に一切存在しないサスペンスを世に問うことは、制作上極めて大きなリスクを伴います。しかし本作は、真田梨央(吉高由里子)、宮崎大輝(松下洸平)、加瀬賢一郎(井浦新)という3人の関係性を軸にした重厚な最愛 キャスト相関図を設計し、視聴者を最後まで飽きさせないプロットを成立させました。
特筆すべきは、当時の公式インタビューやドラマ関連書籍で吉高由里子や松下洸平が語った現場のリアリティです。制作陣は出演者に対しても結末や真犯人を直前まで伏せ、演者自身が役柄と同じ疑心暗鬼と葛藤を抱えながらカメラの前に立つ環境を意図的に作り出していました。公の記者会見でキャスト陣が見せていた張り詰めた表情や、言葉を選びながら語るニュアンスは、演技の枠を超えた真の緊迫感を帯びていたのです。
宇多田ヒカルによる主題歌『君に夢中』が流れるタイミングの絶妙さも語り草です。登場人物の誰もが「誰かを守るための純粋な愛」ゆえに秘密を抱え、結果として悲劇が連鎖していく。犯罪サスペンスの皮を被りながら、本質的には純愛と倫理の境界線を抉る人間ドラマであったことが、放送終了後のギャラクシー賞大賞受賞など専門筋からの絶賛に繋がりました。