本作をめぐるネットの言説において、しばしば見られる誤解が「レスになるのは相手への愛情が冷めたからだ」「浮気をする方が100%悪い」という短絡的な決めつけです。
しかし、作品が描き出した臨床的とも言える真相は、「愛しているからこそレスになる」という逆説的な心理ブロックです。陽一はみちを誰よりも大切に思っていましたが、その親密さが「家族化(母親化)」を生み、性的な緊張感を奪いました。精神分析学でいう「マドンナ・娼婦コンプレックス」に近い心理が陽一の中に働き、聖域である妻には性欲を向けられず、刹那的な関係を持った三島に対してのみ発散できたという悲劇的な構造が存在します。
悪人が一人もいないからこそ解決が難しく、双方が被害者であり加害者になってしまう点が、本作の最大のメッセージであり盲点と言えます。