見慣れた看板が街から姿を消した最大の理由は、2019年4月に実現した出光興産と昭和シェル石油の経営統合に端を発します。当初、両社の企業風土の違いや創業家の反対を巡る報道が連日メディアを賑わせましたが、激動の協議を経て両社は完全統合へ合意。その後、2021年4月から段階的に進められた新ブランド「apollostation」への統一作業が現在、全国の給油所で完了しています。
この大胆なアポロステーション 変更理由には、ブランドライセンスの制約と将来戦略という2つの決定的な背景が存在します。昭和シェルが使用していた「シェルの貝殻マーク(Shell Pecten)」は、英ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)からの商標ライセンス供与に基づくものであり、統合後にいつまでもライセンス料を支払い続けることは経営合理性に欠けていました。同時に、出光の象徴であるアポロマークのみを残せば、旧昭和シェル系の特約店や顧客からの反発を招きかねません。双方の歴史を尊重しつつ、モビリティ社会の変革期に立ち向かう新象徴として選ばれたのが「apollostation」でした。
公式発表資料によると、出光興産 ガソリンスタンド 現在の店舗数は約6,000カ所に達し、業界トップのENEOSに迫る国内シェア第2位を堅持しています。さらに注目すべきは、単なるガソリン補給所からの脱却です。自家発電設備を備え災害停電時でも地域住民へ給油を継続できる「住民拠点サービスステーション(住民拠点SS)」としての指定を全国規模で受けているほか、燃料給油を行わずEVカーシェアや点検などのモビリティサービスに特化した新業態「apolloONE」の展開など、生活インフラとしての進化を加速させています。