休日の夕方ともなれば駐車場待ちの列ができるほどの盛況を見せていた湯処葛西。ネット上では「突然の倒産ではないか」「コロナ禍の打撃による赤字撤退か」といった憶測も飛び交いましたが、商業施設ディベロッパーおよび温浴業界関係者への取材から浮かび上がったのは、全く異なる構造的な要因でした。
最大の決定打となったのは、土地の定期借地権契約の満了です。1990年代後半から2000年代初頭のスーパー銭湯ブーム期に開業したロードサイド型温浴施設の多くは、20年前後の事業用定期借地契約を結んで運営されています。湯処葛西も例外ではなく、契約満了のタイミングと、ボイラーや配管をはじめとする大規模修繕・設備更新の時期が重なりました。
公式発表資料および関係者の証言によると、莫大な再投資を行って契約延長・リニューアルを行う選択肢も検討されたものの、エネルギーコストの高騰や建築資材価格の上昇、地権者側との土地利用方針の調整などを総合的に勘案した結果、契約満了をもって歴史に幕を下ろすという英断が下されました。すなわち、客足が途絶えたための破綻ではなく、役目を全うした上での計画的フィナーレだったといえます。