物語のクライマックスとも言える第5章で、王馬が仕掛けたトリックはまさに圧巻だった。自身と百田解斗の命を天秤にかけ、油圧プレス機を用いた死体特定不能の事件を引き起こしたのだ。被害者が王馬なのか百田なのか、さらには加害者が誰なのかすらモノクマに把握させないという、ゲームの審判者への直接的な反逆。
「誰も真相を知り得ない状況」を作り出すことによって、モノクマの判定をミスに導き、コロシアイ学園生活のルールそのものを不成立に追い込もうとした。極悪非道な黒幕として振る舞うことで周りの憎しみを一身に集め、自らの死すらも武器に変えた彼の決断。そこにあったのは狂気ではなく、極限状態における冷徹な計算と、退屈な絶望に対する意地だった。