愛猫の口内に現れる視覚的な変化は、良性の生理的現象から生命を脅かす重度疾患まで多岐にわたります。まずは、発見頻度の高い代表的な原因とそれぞれの病態を整理します。
まず、猫の口の中の黒い斑点や口の粘膜の黒いシミとして最も多く見られるのが「単純性黒子症(レンチゴ)」です。特に茶トラやサビ猫、三毛猫といったオレンジ系の被毛を持つ猫によく現れる良性の色素沈着で、唇の縁や歯茎、口蓋(上あご)に平坦な黒い点がポツポツと現れます。痛みや痒みはなく、健康上の害はありません。しかし、表面が盛り上がっていたり、短期間で急激に範囲が広がったり、出血を伴う場合は、メラノーマ(悪性黒色腫)などの悪性腫瘍を強く疑う必要があります。
一方で、猫の口の中の赤い腫れや潰瘍が見られる場合、代表的な原因として挙げられるのが歯肉炎・歯周病および猫の難治性口内炎です。猫の口内炎は単なる粘膜の荒れにとどまらず、免疫異常や猫カリシウイルス、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)などの複合感染が関与しており、口の奥(口蓋舌弓)や喉の周辺が真っ赤に腫れ上がって激痛を引き起こします。
さらに、唇や舌、上あごに硬いしこりや潰瘍状の組織が見られる場合は、好酸球性肉芽腫群や猫の口腔内腫瘍で代表的な扁平上皮癌の可能性があります。扁平上皮癌は猫の口腔内悪性腫瘍の約60〜70%を占め、局所浸潤性が極めて高く周囲の骨組織を急速に破壊するため、初期のわずかな赤みや腫れを見逃さない観察眼が求められます。