裏社会を支配した帝王オール・フォー・ワンの正体は、異能(のちの個性)が発現し始めた社会黎明期、混乱の極みにあった日本で生まれた双子の兄です。公式ファンブックや本編の回想録によると、彼の母親は異能による肉体変異を起こした路上生活者であり、河原のゴミ捨て場で誰にも看取られることなく双子を出産し、息を引き取りました。
母胎にいた頃からすでに他者の生命力を奪う本能を持っていた兄は、母の栄養をほぼ一人で吸い尽くし、生まれながらに巨大な生命力を獲得していました。一方で、その陰で栄養を奪われ尽くして生まれたのが、後にワン・フォー・オール(OFA)の始祖となる弟・与一でした。生後間もなく母の遺体から乳を吸い、母の腕に発現していた「異能(突起)」を無自覚に奪い取った瞬間から、彼の略奪の人生は幕を開けていたのです。
少年期、彼が世界の規範としたのは、崩壊した街の残骸から拾い集めた古い漫画本でした。特に強い影響を受けたのが、悪党が世界を牛耳るピカレスク作品の「魔王」の存在です。「みんなが嫌がる悪者になり、すべてを自分の思い通りに支配する」という歪んだ全能感は、弱肉強食の混沌とした時代背景と合致し、彼を純粋な悪の権化へと育て上げていきました。