後年、木村多江は「日本一幸薄い役が似合う女優」として広く親しまれることになる。だが、その卓越した表現力の原点を辿れば、まさにこの貞子役に突き当たる。セリフを削ぎ落とされた静寂の中で、背中の丸め方や息遣いだけで鬱屈した感情を表現する演技の骨組みは、すでにこの時点で完成していた。
当時の撮影エピソードを振り返ると、彼女が現場で見せた空気感は共演者やスタッフをも呑み込むほどの凄絶さだったという。怪物ではなく、怨念に濡れたひとりの生身の人間としてそこに存在すること。それが四半世紀を経た今もなお色あせない、肌にまとわりつくような恐怖の源泉となっている。