Q1:誤嚥性肺炎を発症した80代の親の余命は、一般的にどれくらいと考えればよいですか?
A1:全身状態や基礎疾患の有無により個人差がありますが、統計的には80代以上で重症の誤嚥性肺炎を発症した場合、入院時の急性期死亡率は約15%前後、退院できても1年生存率は約50%程度とされています。初回発症で速やかに嚥下リハビリが奏効した場合は数年単位の余命を維持できることもありますが、再発を繰り返すたびに予後は月単位、週単位へと急速に短縮します。
Q2:食事中にむせることが全くない親でも、誤嚥性肺炎で急変することはありますか?
A2:十分に起こり得ます。むしろ最も警戒すべきは「むせない誤嚥(不顕性誤嚥)」です。喉の知覚神経が麻痺している高齢者は、異物が気管に入っても咳反射が出ません。夜間の睡眠中に唾液が肺に垂れ込み、目立った咳や高熱が出ないまま「何となく元気がない」「急に意識がぼんやりしてきた」という状態で重篤化し、救急搬送された時には敗血症寸前だったという事例が頻発しています。
Q3:胃ろうを作れば、誤嚥性肺炎による死亡は完全に防げますか?
A3:防ぐことはできません。胃ろうは直接胃に栄養を届けるため、食事の咀嚼・嚥下による誤嚥リスクは減らせますが、誤嚥性肺炎の主因である「睡眠中の唾液の誤嚥」や「胃食道逆流による胃内容物の逆流誤嚥」を完全に防ぐことは不可能です。胃ろう造設後も定期的な口腔ケアと食後のギャッジアップ(上体を起こす姿勢維持)を怠れば、容易に肺炎を再発します。
Q4:入退院を繰り返す親に対して、積極的な点滴や抗生剤治療を中止するのは冷酷な判断でしょうか?
A4:決して冷酷な判断ではありません。末期の老衰や不可逆的な多臓器不全が併発している局面において、大量の点滴や強力な抗菌薬の投与を続けることは、心不全や肺浮腫を引き起こし、患者本人に溺れるような強い苦痛を与える場合があります。水分や栄養の投与を身体の処理能力に合わせて絞り、呼吸苦や痰の苦しみを和らげる「緩和ケア」へ舵を切ることは、医学的にも人道的にも極めて尊重されるべき尊厳ある選択です。