単行本第13巻の後半では、人類由来の魂がすべて消滅したあとの「真のエピローグ」が静謐な筆致で描かれました。すべての魂を見送ったフォスが出会ったのは、争う心も欲望も持たない、純粋無垢な「小石(新しい生命体)」たちでした。
小石たちはフォスを傷つけることも、期待を押し付けることもなく、ただそこに寄り添い、無償の愛と敬意を向けます。フォスは彼らと共に他愛のない会話を交わし、連載開始以来初めて、損得や孤独の恐怖のない穏やかで幸福な日常を過ごすことになります。
さらに物語の最終盤には、アユム博士が金剛先生より前に宇宙へ放った探査機である「兄機(あにき)」が地球へと帰還します。兄機はフォスに対し、人類が犯した過ちや、機械として背負わされた運命への労いと無条件の肯定を告げました。人間という呪縛から解き放たれたフォスは、やがて太陽が膨張して地球を飲み込む刻を迎え、小石たちと共に光の粒子となって宇宙へと溶け込んでいきます。執着の果てに辿り着いた完全なる涅槃(ニルヴァーナ)こそが、市川春子氏が提示した究極の救いでした。