ネット上の掲示板やSNSでは、電車の優先席での出来事を盗撮した画像とともに「若者が優先席を占領している」「マナーがなっていない」と晒し上げる投稿が拡散される現象が頻発しています。この背景には、社会心理学でいう「公正世界仮説」と「自警団的(ヴィジランティズム)心理」が色濃く影響しています。
「ルールを守らない悪者を自分が懲らしめてやる」という歪んだ正義感は、相手の個別事情を完全に無視します。例えば、外見は健康そうに見える20代の若者が、実は激しい抗がん剤治療の副作用に耐えていたり、過敏性腸症候群の発作や人工関節の装着によって立位を保てない状態であったりしても、外見だけで「不届き者」と断定してしまうのです。
ある当事者の手記には、「ヘルプマークをカバンにつけて優先席に座っていたら、年配男性から『若いのに図々しい』と怒鳴られ、マークを見せても『そんな偽物の札で誤魔化すな』と罵倒された」という悲痛な告白が記されています。目に見える記号すら否定し、自分の思い込みだけで他者を断罪する空気感は、公共交通機関の心理的安全性を著しく損なっています。