西洋の有名アーティストが日本の文化や食に魅了されるケースは珍しくない。しかし、なぜ高級料亭の懐石料理や有名店の寿司ではなく、庶民的なたい焼きだったのか。
スティーヴン・タイラー自身の言葉を借りれば、そこには「手軽さと完璧な食感のコントラスト」があったという。職人が一丁焼きで焼き上げる直火の香ばしさ、そして一口かじった瞬間に広がる温かな甘み。過酷なワールドツアーのプレッシャーと高揚感の中で、彼にとってのたい焼きは、究極のコンフォートフード(心を落ち着かせる食)として機能していたのだ。ロックスターの胃袋を掴んだのは、日本の職人が何十年も守り続けてきた伝統の技術だった。