『頭山』は演者の力量が極めて問われる演目です。あまりに現実離れした設定であるため、下手をすると単なる荒唐無稽な話として観客が引いてしまう危険を孕んでいます。
この噺の名手として名高いのが、上方落語の巨匠・桂枝雀です。枝雀は「緊張の緩和」という独自の落語理論を体現し、頭の上の大騒ぎによる強烈なストレスと狂気をダイナミックな身振り手振りで熱演しました。男が精神の限界を迎える緊迫感を極限まで高めた上で、最後の身投げのサゲへと雪崩れ込む演技は、爆笑と戦慄を同時に呼び起こす圧巻の芸として語り継がれています。
三遊亭圓生や桂文治といった江戸落語の名人たちもそれぞれ独自の味付けで演じており、語り口によって「哀愁漂うコメディ」にも「背筋が凍る怪談」にも変化する奥行きの深さがあります。