この比類なき注ぎ分け文化を生み出したのが、株式会社重富酒店の代表取締役である重富寛(しげとみ ひろし)氏です。大正時代から続く老舗酒販店の3代目として生まれた重富氏は、かつて街頭や居酒屋で提供される生ビールの品質に激しい危機感を抱いていました。
「同じ樽生ビールを仕入れているはずなのに、店によってなぜここまで味が落ちてしまうのか」。サーバーの洗浄不足や不適切なガス圧管理、雑な注ぎ方によって本来のポテンシャルを殺されている生ビールの現状に憤りを覚えた同氏は、日本各地の歴史あるビアホールや文献を徹底的に調査。そこで出会ったのが、昭和初期に銀座の伝説的ビアホールなどで使われていた旧式スイングカランの存在でした。
構造を研究し尽くして特注で復刻させ、自らの手で毎日の水通し洗浄、スポンジ洗浄、配管の殺菌を徹底。2009年に直営のスタンドをオープンして以降、その圧倒的な技術力は瞬く間に業界の知るところとなりました。現在では全国の飲食店へのサーバーメンテナンス指導や注ぎ手育成セミナーを精力的に行うほか、東京・銀座の広島県アンテナショップ「TAU」でのポップアップイベントやメディア出演を通じ、「生ビールの注ぎ方ひとつで日本の飲食文化を底上げする」活動を続けています。