ケンちゃんラーメンが単なるキャラクター食品にとどまらず、社会的なブームとなった原動力は、徹底した「体験価値の提供」にありました。その象徴が、フタの裏に仕組まれたスピードくじと、付属のおまけシールです。
容器のフタを開けると、裏面に「あたり」または「はずれ」が印字されており、見事「あたり」を引いて応募すると、限定の「ケンちゃんボールペン」がもらえる仕組みになっていました。このボールペンは、ノック部分に志村けんさんの人形が付いており、ノックするたびにカツラが飛び出したり、舌を出したり、あるいは変顔をしたりといった、当時の子ども心を直撃するギミックが満載でした。
当時の子どもたちの生の声や体験談を振り返ると、以下のような光景が全国の小学校で見られました。
「クラスに1人か2人は、筆箱にケンちゃんボールペンを差しているやつがいて、そいつは一躍ヒーローだった」(40代・男性会社員)
「フタを開ける瞬間のドキドキ感は、今のスマホゲームのガチャと全く同じ。当たるまで駄菓子屋に小遣いをつぎ込んだ」(40代・自営業)
また、カップの中には志村けんさんの様々なポーズやギャグをあしらったキャラクターシールが封入されており、ノートや下敷き、自転車の泥除けなどに貼ってコレクションするカルチャーが定着していました。単に「食べる」だけでなく、「めくる」「集める」「自慢する」という一連のエンタメ体験が、100円のカップの中に凝縮されていたのです。