SNSや大手検索サイトで「ゆめのか」と打ち込むと、サジェスト欄に「酸っぱい」「まずい」といった言葉が表示される現象が起きています。青果市場関係者や品種開発の専門家への取材を進めると、この評価の背景には現代のいちご市場が抱える2つの構造的要因が浮かび上がってきました。
第1の要因は、長距離輸送を前提とした「早もぎ(未熟収穫)」の影響です。ゆめのかは果皮がしっかりしており、傷みにくく日持ちが良いという流通上の大きな強みを持っています。そのため、遠隔地への出荷時にヘタ周辺がまだ白っぽい「着色歩合80%前後」で収穫されてしまうケースが稀に発生します。いちごはバナナやキウイと異なり、収穫後に甘みが増す「追熟」をしない果物です。未完熟の状態で店頭に並んだ個体を口にした消費者が、「甘くなくて酸っぱい」「硬くてまずい」という落胆のレビューを投稿してしまうのです。
第2の要因は、日本のいちご消費トレンドにおける「味覚認知バイアス」です。2010年代以降、「章姫(あきひめ)」や「かおり野」、近年ブームの「あまりん」のように、極限まで酸味を抑えて甘さだけを際立たせた品種が人気を集めてきました。その結果、いちご本来の醍醐味である「さわやかな酸味」を「すっぱくて不味い」とネガティブに受け取ってしまう消費者が増えています。しかし、農研機構等の味覚分析でも示されている通り、人間の脳が「コクのある濃厚な味覚」と認識するためには、十分な糖度だけでなく適度な酸度の存在が不可欠です。ゆめのかは酸味が際立っているのではなく、濃厚なコクを生み出すための良質な酸を備えているに過ぎません。