検査当日に向けて受診者が最も神経を使うのが、飲食制限と排泄のコントロールです。「なぜそこまで厳密に絶食しなければならないのか」には、超音波の物理的特性に基づいた明確な理由があります。
食事を摂取すると、消化液を分泌するために胆のうが激しく収縮して小さくなり、胆石やポリープの有無が観察できなくなります。さらに、咀嚼や嚥下に伴って胃や腸の中に空気(ガス)が入り込みます。超音波は空気を透過できない性質があるため、胃の後ろに隠れている膵臓などの臓器が完全に死角に入ってしまうのです。前日の夕食は21時頃までに脂っこいものを避けて済ませ、当日は検査終了まで絶食を守ることが不可欠です。水分摂取についても、指示された時間以降は水やお茶などの無糖・無乳飲料を少量にとどめる必要があります。
一方で、下腹部や骨盤内を観察する際には「尿を溜めておくこと」が求められる場合があります。膀胱に尿が適度に充満していると、超音波を通しやすい「音響窓」の役割を果たし、膀胱の壁やその奥にある子宮・前立腺・卵巣周辺の描出が鮮明になります。直前に排尿してしまうと観察が困難になるケースがあるため、問診時に「尿を溜める指示があるか」を確認しておくと安心です。
女性特有の状況である生理中に関しては、腹部エコーの受診に一切支障はありません。経血が腹部の超音波画像に悪影響を与えることはなく、通常通り安全に検査を受けられます。ただし、採尿検査が同日にある場合は潜血反応が陽性に出てしまうため、受付時に生理中である旨をスタッフへ申告してください。
なお、妊娠中または妊娠の疑いがある場合でも、超音波検査は放射線被曝が一切ないため胎児への影響はありません。ただし、仰向け(仰臥位)の姿勢を長時間続けることで気分が悪くなる「仰臥位低血圧症候群」を防ぐ配慮が必要となるため、事前に検査技師へ伝えておくことが大切です。