名古屋駅のエビフライはなぜ名物に?タモリ発言の真相と名店比較

名古屋駅のエビフライはなぜ名物に?タモリ発言の真相と名店比較

名古屋駅のエビフライはなぜ名物に?タモリ発言の真相と名店比較の真相について、分かりやすい解説を取りまとめてご紹介します。

「名古屋の人はエビフライのことをエビフリャーと呼んで毎日食べている」――1980年代初頭、タレントのタモリ氏がバラエティ番組やラジオ番組で展開した名古屋イジリのネタは、瞬く間に日本全国へと拡散しました。当時、名古屋弁で実際に「エビフリャー」などと発音する地元民は皆無であり、当惑と反発の声が上がったのも無理はありません。客観的な食文化史を紐解いても、エビフライの発祥は東京・銀座の洋食店「煉瓦亭」などが定説であり、名古屋固有の郷土料理では決してありませんでした。

しかし、そこで終わらないのが中京都市圏の強烈な商魂です。地元飲食店や観光業界の関係者は、理不尽なステレオタイプに対して単に抗議するのではなく、「全国がそれほど名古屋=エビフライだと思い込んでいるなら、本物の名物にしてしまおう」と舵を切りました。もともと愛知県は三河湾や伊勢湾という豊かな漁場を控え、海老の消費量が全国トップクラスであったこと、さらに坂角総本舖の「ゆかり」に代表されるえびせんべい文化が根付いていた土壌も幸いしました。外からのからかいという「記号」を、圧倒的な商品力とボリュームで「実体」へと転換させたのです。

都市民俗学や文化社会学の観点から見ても、外部からの差別化のまなざしを自己のアイデンティティへ取り込み、経済的価値へ昇華させたこの現象は極めて稀有な事例です。現在では「名古屋めし」の中核として揺るぎない地位を築き、新幹線の巨大ターミナルである名古屋駅周辺は、その象徴的なショーケースとして機能しています。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。